バイク保険の将来を占うような保険がアメリカで誕生しています。ライドシェア専用の個人保険「ライドセーフ」です。
ライドシェアは日本では未だ市民権を得ていませんが、アメリカや中国では利用者が急増しています。一方で自動車保険はライドシェアに対応できていませんでした。
「ライドセーフ」はライドシェア用に新たに開発された保険です。その仕組みは究極のオンデマンド型保険として、将来の保険の在り方を示唆しています。
ライドシェアとは?
先ずはライドシェアについて、簡単におさらいです。ライドシェアには2つの種類があります。
1.配車型
タクシー会社に迎車を頼むのと似ています。アプリで「現在地から東京駅まで」というように登録すると、GPSを使って近くを走っている車に連絡が届き、その車が迎えに来るのです。
革新的なのは、一般のドライバーが自家用車で顧客を取れることです。日本では白タクと見なされるので、自家用車での対応は禁じられていますが、米国や中国では「仕事から帰ってきたら自家用車を使い、にわかタクシードライバーとして稼ぐ」方も増えています。
2.カープール型
ヒッチハイクのようなイメージです。「これから大阪行きたいんだけど、誰か乗せてくれない?」とアプリで登録すると、「私行くから乗っけてあげる」と誰かが返事をくれるのです。
現地までかかった費用を搭乗者全員で割り勘することで、ドライバーと同乗者の全員にメリットが生まれます。
ライドシェアは、「プロのドライバー」の意味を変える
ライドシェアは「プロのドライバー」という概念を壊しました。ライドシェアの登場で、誰でもタクシードライバーや、長距離バスの運転者になれるようになったのです。
一方で自動車保険は「事業用(プロ用)」と「一般用」が分かれているので、ライドシェアの仕組みに対応できていません。今回新しく出来た「ライドセーフ」は、ライドシェアを行っている時の事故を補償するために作られています。従来の自動車保険の隙間を埋める保険なのです。
しかしここまでは至って普通の話です。これまでの保険で対応できなかった部分を新しく対応できるようにしただけです。
実はこの保険が革新的なのは「乗るときだけ、自動的に保険に加入する」仕組みが用意されていることにあります。
ライドセーフは究極のオンデマンド型保険に進化する
ライドセーフが革新的であるのは、その加入手続きです。
ライドセーフの使い方は簡単で、アプリをダウンロードし、ユーザーが持っているウーバーやリフトのアカウント(筆者注:ウーバーもリフトもライドシェアの運用会社)と同期させる。これだけでユーザーがライドシェアを使った際に自動的に保険が適用されるようになる。価格は24時間単位で2ドル40セント。ライドシェアを利用しない限り保険料も発生しない。
出典 : WEDGE Infinity
この仕組みであれば、加入漏れは発生しません。保険会社は加入率100%の保険を運用でき、安定した収益を期待できます。
一方で利用者も保険に加入し忘れることがありません。しかも乗らない時には保険料が一切掛かからないのです。保険に加入することを全く考えなくても、常に最低限の保険料で必要な保険に守られている、というメリットを享受できることになります。
この自動オンデマンド型とでも言う方式は、保険の在り方を大きく変えます。例えば「予めバイクのキーとアプリを連動させておき、バイクのエンジンが掛かったら保険に加入する」という仕組みが出来るということです。もちろんバイクに乗らない日には保険料は発生しません。
また「タンデムステップを出した時だけ、同乗者の補償がアクティブになる」というような仕組みも出来るかもしれません。可能性は無限大です。
このようなアプリ連携型の仕組みを導入するには、多額の設備投資を伴うでしょう。しかしアプリと保険の連動には、大きな可能性が秘められていますので、是非とも積極的にチャレンジしてほしいと思います。
例えば、バイクの走行状態をGPSで監視し、模範運転のライダーには特別割引を提供する、違反率が高いライダーには高い保険料を課す、という仕組みが出来れば、保険金の支払いリスクを減らせます。結果的には保険会社の収益を増やすでしょう。
アメリカの発想はいつも独創的で、スピード感に溢れていて驚かされます。
今後も目が離せません。