いよいよ東京都でも、自転車保険への加入が義務化されます。
これを機に、各保険会社は、こぞって自転車保険を発売していますが、契約は少し待ちましょう。
もしあなたが今、次の保険のどれかに入っているならば、既に自転車保険の加入義務を満たしているかもしれないのです。
- 火災保険
- 自動車保険
- バイク保険
- 学校が取り扱う、生徒用の保険
- 入居しているマンションの入居者用保険(賃貸・持ち家問わず)
自転車保険を検討する前に、今加入している保険の内容を確認してみて下さい。
目次
自転車保険 義務化の内容
今回義務化されるのは「誰かにケガをさせた時のための保険」だけです。「自分のケガのための保険」は義務ではありません。ここが重要なポイントです。
なぜ相手のケガの保険だけが義務化されるのでしょうか。
それは、自転車が起こした事故で、加害者(自転車に乗っていた人)が、多額の賠償金の支払いを求められるケースが増えてきたからです。
事例1
賠償額 9,500万円
男子小学生が、自転車で時速20~30キロ程度の速度を出して、坂を下っていたところ、歩いていた女性に気づかずに、正面衝突。女性は意識不明の要介護状態となりました。
事例2
賠償額 9,300万円
男子高校生が昼間、歩道から車道を斜めに横断したところ、対向車線を自転車で走っていた会社員男性と衝突。会社員は転倒し負傷した結果、言葉に障害が残りました。
事例3
賠償額 5,000万円
女子高校生が夜間に携帯電話を操作しながら、無灯火で自転車を運転していたところ、歩いていた女性に追突してケガを負わせました。被害者女性は歩行困難となり、失職しました。
このように、自転車の事故により、加害者に多額の賠償金が請求されるケースが増えたのです。また、賠償金は被害者の逸失利益などを基に算出されるので、加害者が子供であったとしても、賠償金が減免されることはありません。
バイクや自動車には、このような高額の賠償金に備えるために、自賠責保険への加入が義務付けられていますが、自転車にはそのような仕組みがありませんでした。
そのため、自転車の事故で大きな被害を負ったにもかかわらず、加害者に賠償金を支払えるだけの資金力が無いと、被害者は満足な治療すら行えません。
このような事態を防ぐために、自転車も保険への加入が義務付けられるようになるのです。
つまり、義務化されるのは、被害者を救済する保険であって、加害者のケガに対する保険は義務に含まれていません。
【自転車保険】 実は呼び名を変えただけ
自転車保険は、自転車による交通事故の被害者を守る目的の、損害賠償保険が主となっています。
さらに、損害賠償保険の他に、もう一つ、別の保険が含まれていることがあります。
自分のケガに対する保険です。
損害賠償保険は、相手のケガしかカバーしませんから、自分のケガの治療費は、自分で払わなければなりません。このリスクを減らすために、自分の治療代を出してくれる「医療保険」が組み合わされています。
つまり、自転車保険とは「損害賠償保険」、或いは「損害賠償保険+医療保険」の呼び名を変えただけなのです。
(保険会社によっては、これらの保険の他に、自転車のパンクなどに備えたロードサービスを付けていますが、、、、必要でしょうか?)
この保険があれば、自転車保険は要らない
自転車保険とは、「損害賠償保険」と「医療保険」の組み合わせで構成されていますが、実はこの2つの保険は、他の保険商品の中に組み込まれていることが多いのです。
損害賠償保険が含まれている保険
次にあげる保険には、損害賠償保険を付けることが出来ます。
- 自宅にかけている火災保険
- 自動車にかけている自動車保険
- バイクに掛けているバイク保険
- 学校が勧める、生徒用の保険
- 入居しているマンションの入居者用保険(賃貸・持ち家問わず)
- こども保険(学資保険ではありません)
これらの保険は、損害賠償を目的としているか、損害賠償を特約として付けることが出来ます。
さらに、損害賠償保険の多くは、家族まで補償してくれます。つまり、家族のだれか1人でも上記の保険に入っていれば、家族全員が損害賠償保険に入っていることになり、自転車保険の加入義務を満たせるケースが多いのです。(こども保険や、生徒用の保険は例外です)(家族であっても、既に就職した子や、婚姻歴がある子は補償外となるケースがあります。)
医療保険が含まれている保険
次に医療保険を見てみます。
医療保険は自分のケガに対する保険ですが、次のような保険に入っていれば、自転車でのケガも補償の対象になります。
- 健康保険(サラリーマンなど)
- 共済組合(国家公務員、地方公務員など)
- 国民健康保険(自営業者など)
- 医療保険
- 交通傷害保険
- こども保険
- 学校が勧める、生徒用の保険
健康保険、共済組合、国民健康保険は加入義務がありますから、保険料を払ってさえいれば、保障が得られます。
その上で、民間の医療保険や、交通傷害保険に入っていれば、健康保険等ではカバーされない費用まで、カバーされるようになります。
但し、損害賠償保険と違って、家族のうちだれか一人が入っていれば、その他の家族もカバーされるという仕組みは医療保険にはありません。医療保険は、1人1人個別に入る必要があります。
自転車保険を検討すべき人とは?
このように、自転車保険への加入義務を既に満たしている方は、相当多くいるのです。
それでは自転車保険への加入を検討しないといけない方とは、どのような方でしょうか?
次に該当するなら、加入を検討してください。
- 家族のだれも火災保険、自動車保険、バイク保険などの保険に入っていない
- 火災保険等には入っているが、損害賠償保険が付いていない
- 損害賠償保険に入っているが、補償額が1億円に満たない
- 損害賠償保険が家族全員をカバーしていない(こども保険など)
これらのどれか1つに該当するなら、先ずは損害賠償保険への加入を検討してください。
既に火災保険や自動車保険などに入っているなら、その保険の特約として賠償責任保険を付けて下さい。
賠償責任保険を付けることで、保険料は上がりますが、自転車保険に加入するよりも、ずっと安価で契約できるはずです。
「補償額1億円」のワケ
ところで、先ほどのリストで「補償額が1億円に満たない」という条件を示しましたが、この理由について、説明いたします。
この「補償額」には2つの意味があります。
1つ目の意味 : 支払われる保険金の最高額
2つ目の意味 : 保険会社が示談交渉できるボーダーライン
1つ目の意味はよく知られていると思います。補償額1億円の保険なら、支払われる保険金の最高額も1億円です。
それでは2つ目の意味「保険会社が示談交渉できるボーダーライン」についてはご存知でしょうか?
この2つ目の意味は極めて重要ですが、あまり知られていないので、必ずお読みになってください。
殆どの保険会社は、加入者が事故に遭うと、加入者の代理人として、示談交渉を行ってくれます。
しかし、示談する金額(相手が求める賠償額)が、保険をかけている金額を超えると、保険会社は代理人になれなくなってしまうのです。
これは弁護士法に基づく制限なので、保険会社は法律を守っているにすぎません。
一番最初に例を挙げたように、小学生の子供が起こした事故で、賠償金9,500万円が言い渡される時代です。1億円を超える支払い命令も、近い将来出てくるでしょう。
そのような重大事故への対応を、経験豊富な保険会社の助けなしに、行えるでしょうか?
このような事態を避けるため、最近の賠償保険の多くは、上限額を3億円~無制限にまで引き上げています。
自転車の賠償保険を検討する場合には、最低でも1億円、出来れば3億円は設定してください。
(自動車保険などの場合には、人だけでなく、道路設備や、店舗などを破損させることがあるので、3億でも足りなくなります。必ず無制限を選んでください。)
損害賠償を追加するには
今までご覧いただいたように、自転車保険に入らなくても、自転車保険の加入義務を果たす事は出来ます。
自転車保険が義務化されたと報道されますが、実際は損害賠償保険な義務化されたに過ぎないのです。そして損害賠償保険は、これまで多くの方が契約している、自動車保険、火災保険などに付け足すことが出来ます。
保険料の面からも、その後の管理の面からも、保険契約を増やす事にメリットはありません。
特に損害賠償保険の場合には、保険契約の数を増やしても、実際に受けられる保険金の額は増えません(医療保険は、保険に入った分だけ、受け取れる保険金が増えます)。
つまり、自転車保険を新たに掛けるよりは、今契約している保険に、損害賠償保険を加えた方が、メリットが得られるケースが多いのです。
まとめ 保険選びは落とし穴がいっぱい
保険商品には、内容はあまり変わらないのに、名前が違うものが多くあります。
それを知らずに、新しい保険を契約してしまうと、実際に受け取れる保険金が増えないのに、支払う保険料だけが増えてしまいます。
バイク保険には、損害賠償保険が付けられます。バイク保険に加入することで、自転車の賠償責任にも対応が出来るようになりますので、今一度損害保険の内容を確認してみては如何でしょうか。