自動車損害賠償保障法は交通事故の被害者の救済を目的として、昭和30年に設けられた法律です。
事故の被害者は加害者に対して賠償金を求めますが、これに法的な裏付けを与えているのも、この自動車損害賠償保障法です。
第三条
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
また賠償金が確実にかつ適切な時期に支払われるよう、自動車賠償責任保険(自賠責保険)の制度も定めています。
自賠責保険を扱っている保険会社は、このルールに従って自賠責保険を運用しています。
第十六条
第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。
第十六条の三
保険会社は、保険金等を支払うときは、死亡、後遺障害及び傷害の別に国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払基準に従つてこれを支払わなければならない。
このように支払いの根拠と支払いの源泉となる自賠責保険の制度を定めているのが、自動車損害賠償保障法なのです。
自動車損害賠償保障法は性悪説がベース
あまり良い表現ではないのですが、この法律は性悪説がベースです。「事故が起きたら基本的に車側が悪い」という考えに基づいているのです。
そもそも「免許」は「本来は禁止だけど、特別に許可する」というものです。許可を与える前提として、事故を起こさないように運転するための技術とスキルが有ることが求められます。つまり事故を起こした時点で失格だということです。
そのため、この法律は「事故の責任は基本的にライダー側に有る。責任が無いと思うなら、自分で立証しなさい」と定めています。
第三条
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
この考え方は、刑法や民法とは逆です。
刑法や民法は、先ず加害者(被告)には責任が無いという前提で話が始まります。そのため被害者(告訴した側)が加害者の過失を証明しなければなりません。刑事事件などで「証拠」が無いと有罪になり難いのはこのためです。刑法や民法では被害者が有罪を立証できない限りは無罪とされています。
この違いからも、バイクや自動車の運転が法律上いかに大きな責任と義務を負わされているかが分かると思います。
バイクで事故を起こした場合、自分が無過失であることを立証しなければなりませんが、この立証はかなり困難です。
自賠責保険の趣旨を理解しよう
この法律が有ることで被害者救済の道はかなり改善されています。単純にこの法律が無かったら、被害者は泣き寝入りを強要される可能性がかなり高いはずです。
強制保険という名称が与えられてはいますが、この法律は全ての人にとって必須のものです。その趣旨を十分に理解して自賠責保険に加入すれば、その料金は決して高くないと感じるでしょう。