実際の事故において用いられる過失割合を見てみます。
今回は自動車とバイクの事故で、両方が同じタイミングで交差点に進入し、衝突したケースを考えます。
バイク乗りなら、一度はヒヤッとした経験が有るのではないでしょうか?
目次
双方直進事故のケース
この図のように信号機がない交差点で、道路の幅も同じ、バイクも自動車も速度違反がなく、全く減速せず交差点に同時に入り事故を起こしたとします。
過失割合
この事故の過失割合は車が70% バイクが30%です。つまり事故原因の7割が車にあり、3割がバイクにあるということです。
このケースのように、同じ道幅、信号機無しのような、どちらに優先権が有るか定かでない場合には、左から出てくる車両に優先権が有ります。
そのため、バイク側に優先権があることになり、車側の方が責任が重い(過失割合が高い)という判断が下されます。
ですが、もしこの事故が車同士であったなら、赤い矢印の方の過失が40%、緑の方が60%です。
車とバイクの事故の場合にはバイクのほうが弱者とみなされるので過失割合が変わり、自動車側の過失が10%加算されます。これを「単車修正」と言います。
次に車に優先権がある場合を見てみます。このようなケースです。
基本的には(両方が車だったら)過失割合は先ほどと同じように緑側がが40%、赤側が60%です。ただしバイクの場合には10%の単車修正が行われるので、過失割合は両方とも50%となります。
過失割合は修正要素で変わる
先ほどの過失割合は「双方が同じように不注意であった場合」でしたが、実際には様々な事象を加味して過失割合に修正が加わります。これを修正要素と言います。
先ほどの、双方の過失割合が50%となるケースでは、バイクも車もブレーキを踏まずに交差点に入ったという前提でしたが、どちらか一方がブレーキを踏んでいた時にはどうなるのでしょうか?
このようなときに「修正要素」が持ち出されます。
先ほどと同じ状況ですが、今回はどちらかが減速しています。
基本過失割合は車、バイク共に50%ですが、減速により過失割合が修正されます。
バイクは減速したが車が減速しなかった場合: 車に20%加算 → バイク:30%、車:70%
車は減速したがバイクは減速しなかった場合: バイクに10%加算 → バイク:60%、車:40%
このように修正要素についてもバイクのほうが優遇されています。
単車修正はバイク側がケガをしていることが前提
単車修正はバイク搭乗者がケガを負った場合にか適用されません。ケガが無い場合には単車修正は行われないのです。
参考記事 : 過失割合の基礎知識
過失割合は揉めることが多い
過失割合は事故の一瞬の出来事で大きく変わります。
今回のケースでも、交差点に入るときに減速していたかどうかで過失割合が変わりました。
しかし、よほどの急ブレーキでもなければ、道路にタイヤ跡が残りません。ですから減速していたかどうかは事故当時者や目撃者の主観に拠ってしまうことが少なくありません。
一方で、過失割合が何%になるかで、自分が負う賠償額も、保険会社から得られる保険金も変わります。
大きな事故の場合には、刑事責任にも影響が出ます。
そのため、過失割合の算定は事故後に最も揉める事項なのです。
最近は車にドライブレコーダーを付ける方が増えましたが、その一番の理由は「客観的な記録を残す」必要性を感じているからでしょう。
客観的な記録さえあれば、揉める可能性は格段に減ります。
幸いなことに、バイク用のドライブレコーダーも出てきています。
事故の防止と、根拠がない責任を負わないように装着を検討しても良いでしょう。
一例をご紹介しますので、参考にして下さい。