対物超過修理費用特約を一言で言えば、「普通なら保険で出ない修理費を上乗せして払います。」という特約です。
この特約には保険を理解するうえで大切な考え方である「時価」が関係しますので、詳しく説明します。
少し長くなりますが、ここで理解してしまいましょう。
目次
補償対象は「相手の車の時価」
この特約の対象となるのは相手の車両です。自分の車両ではありません。
事故で相手の車やバイクに損害が生じた時に使える補償です。
対物賠償責任との関係と「時価」の落とし穴
相手の車両の修理費用を補償するのは「対物賠償責任保険」です。
このサイトでも何度も記していますが、対物賠償は無制限としてください。
その上で、対物超過特約も付けると良いでしょう。
実は「無制限」とは「幾らでも払う」という意味ではないのです。
対物賠償で保障されるのは最高でも「時価」までです。
「時価」
時々お寿司屋さんなどで見ますよね、
時価と書いたネタを注文するのは中々勇気がいります。
保険で言う時価も基本的にはお寿司と同じ考え方です。
ここで一つ質問です。
1台は新車で100万円です。
もう一台は10kmだけ走っています。10kmだけ走ったバイクを新車と同じ100万円で売ると言われたら、あなたは買いますか?
どうでしょう?
多分買わないのではないでしょうか。
「新車じゃないから値引いて欲しい」と思うでしょう。
これがまさしく時価です。
例え10kmでも走ったら、中古として価格が下がるのです。
対物賠償保険が補償する金額はこの「中古価格」を上限としています。
物の価値は立場で変わる
もう一つ質問です。
新車で購入後10kmだけ走ったあなたのバイクが、事故で廃車になったとします。
その時に「このバイクは中古なので、補償は時価の90万円しか出ません」と言われたらどうでしょう?
あなたは「時価だからしょうがない」と納得できますか?
どうでしょう?
「10kmなんて走ったうちに入らない。新車と同じ100万円が補償額であるべき。」と思いませんか?
このように物の価値は見る人によって変わるのです。
時価を超える修理費に支払い義務はない
時価という考え方は法律に基づいています。
ですから事故で相手の物を壊したとしても、時価以上の賠償をする必要はありません。
保険から支払われる金額も時価までです。
ですが相手はどうでしょう?
「時価だから90万円です」と言われて納得するでしょうか?
このように時価で話を進めると、事故後の示談交渉が揉める可能性が高いのです。
このような「時価」が示談の障害となる場合に、時価に上乗せして賠償金を払うのが「対物超過修理費用特約」なのです。
揉めた時に対物超過修理特約が付いていると、保険会社は時価に上乗せして賠償金を支払うことができ、示談交渉をスムースに進められる可能性が高くなります。
示談が長引くと、あなたの罪が重くなる?
「時価が法律なら時価で補償すればいい。それ以上は払わない。」という考えも成り立ちます。
しかし補償額を巡って示談が長引くと、加害者にもデメリットが及ぶ可能性があります。
人身事故の場合、検察は加害者を起訴するかどうかの判断を行います。
加害者を起訴するかどうかを判断する際に、示談が成立しているかどうかが加味されるのです。
もちろん「示談成立=不起訴」「示談不成立=起訴」というように単純に判断されるわけではないのですが、判断材料の1つであることは間違いありません。
この特約を適用して示談を早めることは、事故の双方にとってメリットがあるのです。