高速道路で相手の車を無理やり停車させた結果、後方からトラックが追突し、死者が出るという事故が起こりました。
この事故に端を発し、あおり運転への注目が高まっています。
一般人には理解できない行動ですが、このような「あおり運転」はなぜ起こるのでしょうか?
特にバイクに的を絞って、あおり運転はなぜ起こるのかを考えてみます。
目次
あおり運転に注目が集まっている
最近になって、あおり運転についての報道をよく見るようになりました。きっかけは東名高速での事故かと思います。
高速道路で相手の車を停止させるという行為は、狂気以外の何物でもありません。かなりセンセーショナルな事件でしたので、マスコミが一斉に取り上げ、その後似たような事件が取り上げられ続けています。
恐らく以前からあおりの被害は多くあったのでしょう。ただし今回はあまりにも衝撃的であったために取り上げられたのだと思います。
世間の目が集まったことで警察も対策に乗り出していますので、マスコミ効果が良い形で出ているのではないでしょうか。
一方で心配されるのは模倣犯です。模倣犯の思考回路は全く理解できませんが、マスコミで目にした行為を「面白そう」と真似する輩は必ずいます。この点はマスコミ報道の負の部分です。
煽り運転は違反になるのか
「煽り運転」という言葉は道路交通法には存在しませんが、違反に該当する行為は多くあります。
前車との車間距離を必要以上に詰める行為
車間距離不保持(道路交通法第26条)
3月以下の懲役又は5万円以下の罰金(高速自動車国道等)
5万円以下の罰金(その他の道路)
急な割り込みや幅寄せ等
進路変更禁止違反(道路交通法第26条の2)
5万円以下の罰金
急ブレーキ禁止違反(道路交通法第24条)
3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
安全運転義務違反(道路交通法第70条)
3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
左側から追い越しをする
追越し違反(道路交通法第28条)
3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
パッシングや警音器を鳴らす
減光等義務違反(道路交通法第52条)
5万円以下の罰金
警音器使用制限違反(道路交通法第54条)
5万円以下の罰金
このように違反項目は多いのですが、罰則は軽微なのが気になります。
近年飲酒運転が激減していますが、その大きな要因は平成18年の福岡の事故(飲酒運転車両に追突された車が橋から転落し、幼児3名が死亡)をきっかけとして、飲酒運転にも危険運転致死傷罪が適用されることが、広く世間に知られたためです。
今回の煽り事故も危険運転致死傷罪の適用となるでしょうが、飲酒運転に比較して禁止行為が見えにくいため、煽り行為自体はあまり減らないのではないか、というのが私の予想です。
大変残念ですが、煽り行為に対しては当面自衛策を講じる以外に対策は無いと感じます。
煽る側の心理
煽られないようにするためにはどうすれば良いのでしょうか。
そのためには先ず煽る側の心理を考える必要がありそうです。
煽る方の心理を理解する必要はありませんが、原因は知っておいた方が良いでしょう。
煽る時には主に2つの精神状態が考えられます。
「なにかに苛立っている」場合と「煽ることを楽しんでいる」場合です。
苛立って煽るケース
道路を走っていると苛立つ要素は無数にあります。
特に苛立ちが募るのは、「自分が走りたい速度で走れていない」時や「思いがけない状況が起こった」時です。
あなたにも経験が有るのではないでしょうか?。
気付かないうちに前の車との車間距離が短くなって、結果的に自分が煽っていたことは無いでしょうか?
きっと車を運転する全ての方が煽る側になる可能性があるのです。殆どの方は理性でその感情を抑えていますが、一部の理性が利かない方や、イライラが理性の限界を超えた方が煽りをするのです。
この「自分も煽る可能性を持っている」という意識は、煽られないための対策を取るうえで大変重要です。
渋滞でのイライラ
渋滞でのイライラは誰でも経験があると思います。これは避けられません。煽られないために重要なのはイライラのはけ口になるような目立った行動をしないことです。
具体的には「割り込み」「すり抜け」などです。
特に原付は注意が必要です。
原付が信号待ちですり抜けていくと、車のドライバーは少し不快に感じます。車が走り出すと直ぐに追いついてしまい、ぶつからないように気を遣って追い抜かなければならないことが分かり切っているからです。
信号の多い道路では、すり抜かれる→追い抜く→すり抜かれる、という行為を繰り返すことを想像してしまうのです。これはかなりイラつきます。
道路法規では交差点から30m以内は他車を追い越してはいけませんし、車の左側から追い越すことも認められていません。
あおりはいけませんが、バイクのすり抜けを見てイライラしたとしても、法的には車側に理があるのです。このことを忘れてはいけません。
思いがけない状況が起こったとき
バイクに乗っていて思うのですが、危険な進路変更や割り込みをするバイクって本当に多いです。
車でウィンカーを出さない方も稀にいますが、バイクの比ではありません。
また、ウィンカーを出したとしても後方目視確認をせずに、ミラーだけを見て進路を変えるバイクも多いです。
バイクのミラーは車に比べて死角部分が多くなっています。特に斜め後ろは殆ど映りません。後方目視をしないと、斜め後ろの車に気付かずに車線変更をする可能性が高いのです。その結果、後方の車にブレーキを踏ませます。
これはかなりイライラします。
また、車を運転していると感じるのですが、バイクの後ろを走るのはあまり気分の良いものではありません。
目障りだというのではなく、「もし転倒したら?」と考えると怖いのです。
そのため私は出来るだけバイクの後ろを走るのを避けるのですが、避けたにも関わらずまた前に来られたりすると、イラっとします。
煽ることを楽しんでいる
東名高速の事故の犯人も恐らくこのケースです。
逮捕後に余罪が多く出てきていますので、常日頃から煽る相手を探していたような状態だったのでしょう。
大変理解に苦しむのですが、単なる暇つぶしで煽ってくる方もいます。これは防ぎようが有りません。
このような場合には、出来るだけ人がいる場所で一旦停止してしまいましょう。
高速道路なら左車線に避けるか、可能であればサービスエリアなどに入ってしまいましょう。
出来るだけ人の目に付くところに回避します。
バイクが車に本気で煽られたら、勝ち目はありません。
また、スピードを出して逃げる行為は危険なだけでなく、煽り行為を助長させますので絶対に行ってはいけません。
相手は煽りを楽しんでいるのです。正面から対応してはいけません。
まとめ 煽る側に立って考えてみる
煽り運転は決して許される行為ではありません。
ですが煽る側にもそれなりの理由や原因があることは考慮すべきです。
自動車、バイクを問わず道路は公共の場です。全ての人が安全に気分良く走るためには、他の車に対しての配慮が不可欠です。
他人をイラつかせるような行為は慎みましょう。
イラつかせる行為が無いライダーは結果的に目立たないライダーとなり、煽りの標的にされる可能性も減るのです。
目立たないライダーとは、他人にストレスをかけずに上手に走れるライダーです。
自分も他人も気分よく走れるライダーを皆で目指しましょう。
参考記事 : あおられない走り方