事故の被害者となった時に自賠責保険から支払われる補償は「必要最低限の額」とされています。
一方で任意保険の補償額が自賠責保険で賄えない部分のみに限定されているなど、様々な事項の基準となっています。
それでは、「最低限」かつ「基準」となる自賠責の補償額とはどの程度なのでしょうか?
目次
自賠責保険より支払われる保険金(補償金)
自賠責保険から支払われる補償は「被害者の体への損害」に限られます。加害者の体と全ての物の損害は補償されません。
参考記事 : 任意保険と自賠責保険の違い
被害者への補償は「傷害による損害への補償」「後遺障害への補償」「死亡時の補償」の3つに分類されます。
傷害による損害への補償
被害者の傷害(ケガ)に対しては以下の基準に基づいて支払いが行われます。
最高金額は1名について120万円です。
支払の対象となる損害 | 支払基準 | ||
---|---|---|---|
治 療 関 係 費 |
治療費 | 診察料や手術料、または投薬料や処置料、入院料等の費用など。 | 治療に要した、必要かつ妥当な実費が支払われます。 |
看護料 | 原則として12歳以下の子供に近親者等の付き添いや、医師が看護の必要性を認めた場合の、入院中の看護料や自宅看護料・通院看護料。 | 入院1日4,100円、自宅看護か通院1日2,050円。これ以上の収入減の立証で近親者19,000円、それ以外は地域の家政婦料金を限度に実額が支払われます。 | |
諸雑費 | 入院中に要した雑費。 | 原則として1日1,100円が支払われます。 | |
通院交通費 | 通院に要した交通費。 | 通院に要した、必要かつ妥当な実費が支払われます。 | |
義肢等の費用 | 義肢や義眼、眼鏡、補聴器、松葉杖などの費用。 | 必要かつ妥当な実費が支払われ、眼鏡の費用は50,000円が限度。 | |
診断書等の費用 | 診断書や診療報酬明細書などの発行手数料。 | 発行に要した、必要かつ妥当な実費が支払われます。 | |
文書料 | 交通事故証明書や印鑑証明書、住民票などの発行手数料。 | 発行に要した、必要かつ妥当な実費が支払われます。 | |
休業損害 | 事故の傷害で発生した収入の減少(有給休暇の使用、家事従事者を含む)。 | 原則として1日5,700円。これ以上の収入減の立証で19,000円を限度として、その実額が支払われます。 | |
慰謝料 | 交通事故による精神的・肉体的な苦痛に対する補償。 | 1日4,200円が支払われ、対象日数は被害者の傷害の状態、実治療日数などを勘案して治療期間内で決められます。 |
出典 : 国土交通省
実費、入院1日4,200円。。。必要最低限、というよりも最低限にも満たない金額と言って良いと思います。
治療には健康保険が使えますし、支払いが多額になれば高額医療費補助などの補償も受けられますので、これらの金額の低さはある程度は補われますが、それにしても低いです。
後遺障害への補償
治療の甲斐なく障害が残ってしまった場合には、以下の補償が支払われます。
最高金額は傷害の程度により金額が変わります。
要介護1級(生命を維持する為には常に介護が必要な状態) : 4,000万円
要介護2級(生活していくうえで随時介護を要する状態): 3,000万円
それ以外の後遺傷害 : 傷害の程度により75万円~3,000万円
支払の対象となる損害 | 支払基準 | |
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逸失利益 | 身体に残した障害による労働能力の減少で、将来発生するであろう収入減。 | 収入および障害の各等級(第1~14級)に応じた労働能力喪失率で、喪失期間などによって算出します。 |
慰謝料等 | 交通事故による精神的・肉体的な苦痛に対する補償。 | 要介護1級は1,600万円、2級は1,163万円が支払われ、初期費用として(1級)500万円、(2級)205万円が加算されます。それ以外の場合は32万円~1,100万円が支払われ、被扶養者がいれば増額されます。 |
死亡時の補償
支払の対象となる損害 | 支払基準 | |
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葬儀費 | 通夜、祭壇、火葬、墓石などの費用(墓地、香典返しなどは除く)。 | 60万円が支払われ、立証資料等によって、これを明らかに超えるなら、100万円までで妥当な額が支払われます。 |
逸失利益 | 被害者が死亡しなければ将来得たであろう収入から、本人の生活費を控除したもの。 | 収入および就労可能期間、そして被扶養者の有無などを考慮のうえ算出します。 |
慰謝料 | 被害者本人の慰謝料。 | 350万円が支払われます。 |
遺族の慰謝料は、遺族慰謝料請求権者(被害者の父母、配偶者及び子)の人数により異なります。 | 請求者1名で550万円、2名で650万円、3名以上で750万円が支払われ、被害者に被扶養者がいるときは、さらに200万円が加算されます。 |
必要最低限にも満たない支給額
上記のように自賠責保険の補償額は必要最低限にも満たない金額となっています。
「事故を起こすと幾らかかる?」で算定した通り、事故後の治療費は簡単に100万円を超えますので、自賠責保険の上限である120万円ではあまりにも心もとない金額です。
また死亡保険金についても将来の逸失利益や損害賠償を含んでの3,000万円ですので、これも社会通念から大きく外れた金額と言えます。
これらを補うために、私たちライダー1人1人が任意保険の重要性を認識し、適切な保険に加入することが大変重要であると言えます。