
【バイク保険・見直し実況解説】も6回目となりました。
ようやく自動車保険・バイク保険でカバーすべき内容が決まりましたので、保険会社より見積もりを取ります。
Tさんには以下の決定条件をもとに自動車保険 見積もりサイトとバイク保険見積もりサイトへ見積もり請求を行って頂きました。「要検討」となっていた車両保険は価格を見て判断することにされたそうです。
これまでにTさんが決めたこと
相手への補償
対人賠償 無制限
対物賠償 無制限
自分への補償
死亡保障2,400万円
車両保険
必要性を再検討
ロードサービス
レッカー距離は50kmでカバー可能。
バイクよりも車への対応、特に故障リスクを重視。
JAFやクレジットカード提携のロードサービスも並行検討する。
目次
見積もりを取るときの注意点
見積サイトで条件を記入するときに注意頂きたい点が幾つかあります。
基本条件はこれまでに決めた内容で良いのですが、保険には様々な特約が有り、それらが必要かどうかの判断が難しいのです。
特にネット保険の場合には新しい特約を積極的に作るので、名称だけでは補償内容が分かり難いものも有ります。
もし迷ったら次の前提で特約を設定してください。見積もりはあくまでも見積もりで。後から幾らでも変更できます。
相手の補償は期待しないこと
鋭い方は「必要となる死亡保障2,400万円は相手の保険から出るのではないか?」とお考えになるかもしれません。
確かにその通りなのですが、それはあくまでも相手が任意保険に入っていた場合の話です。
任意保険加入率は自動車で74%、バイクに至っては44%です。実に自動車の4台に一台、バイクの半分以上は無保険であることを忘れないでください。
ですから特約を選ぶ際には、相手には期待せずに選定するようにします。
相手の過失までカバーする補償は積極的に付ける
相手の過失をカバーする補償とは「人身傷害特約」「無保険車特約」などです。人身傷害特約と無保険車特約が付いていれば、相手が無保険であっても、かなりの部分をカバーしてくれます。
これは決して相手が逃げ得になるということではありません。本来の相手の負担額はその後に保険会社が回収手続きを行います。
プロの回収なので、かなり厳しい対応になるはずです。万が一保険会社が回収できなくても、被害者に支払われる賠償額は変わりません。
示談に役立つ特約を積極利用する
「対物超過特約」「弁護士費用特約」などです。対物超過特約は相手の物へ与えた損害額が時価を超えてしまった場合に、補償額を上乗せしてくれます。
この上乗せが有るのと無いのでは相手の受ける印象がかなり違うので、示談の早期化に役立ち、最終的にはご自身のメリットにも繋がります。また「弁護士費用特約」は必須と考えてください。
ほかの保険でも入れる補償は慎重に選ぶ
「弁護士費用特約」「交通事故危険補償特約」「自転車賠償責任特約」などです。
どの特約も「自動車事故に限らす、日常で起こった事故を全てカバーします」とか「契約者本人だけでなく、ご家族もカバーします」というような内容なので、他の損害保険で加入していれば既にカバーされています。他の保険でカバーされていれば、バイク保険や自動車保険に改めて付ける必要はありません。
もし他の保険で加入していない場合には新たに加入しても良いのですが、そうするとバイク保険を解約した際にこれらの補償も終わってしまいます。これらの補償はバイクに乗らなくなっても必要なので、出来ればもっと長期の保険の特約とすることをお勧めします。
例えば住宅の火災保険には日常の賠償責任をカバーする特約が付いていることが多いので、確認してみてください。学校が勧めてくる賠償保険にも同種の補償が付いています。
火災保険のように解約の可能性が低い保険の特約とすることで、知らない間に解約してしまうリスクを減らすのです。
見積もりの段階ではこの特約を付ける
無保険車特約、弁護士費用特約、対物超過特約
人身傷害の補償範囲について知っておこう
ここからは少しややこしい説明になります。
「細かな事は結構」と思われる方のために結論を先に書きます。
多額の人身傷害を付保しても満額が支払われる方はあまり多くありません。
3,000万円程度をかければ良いでしょう。
それではその根拠を説明します。
人身傷害の金額の計算方法
人身傷害の支給金額の内訳ですが、支給額の内訳はこのようになります。
各項目を順番に見ていきます。
逸失利益の計算
逸失利益とは、事故にあった方が失ってしまった将来の利益です。
仕事が出来なくなったのであれば、その方が今後貰えたであろう給与額が逸失利益となります。
保険約款には逸失利益を以下のように計算すると書かれています。
この考え方は法的に定まっており、金融庁と国土交通省が告示しています。
生活費の算出方法
生活費は扶養している方の人数で決まります。
被扶養者がいない場合 | 収入の50% |
被扶養者が1人 | 収入の40% |
被扶養者が2人 | 収入の35% |
被扶養者が3人以上 | 収入の30% |
ライプニッツ係数
ライプニッツ係数とは平たく言うと「これからもらう給料を今一度に貰ったら幾らになるか」を計算するための数値です。被害者が若ければ数値が上がり、年配であれば下がります。実際の表はこちらでご覧いただけます。
Tさんの逸失利益を計算する
Tさんのケースで実際の逸失利益を計算してみましょう。
Tさんの条件は次の通りです。
年収:500万 扶養家族2人
これを算定式に当てはめると以下のようになります。
(500万‐175万)×11.274=3,664万円
つまり逸失利益として支払われる最高額は3,664万円です。
精神的損害への賠償の計算
人身傷害には「精神的損害」に対する賠償も行われるのですが、これも告示により金額が決まっています。
死亡者本人 | 350万円 |
請求権者が1人の場合 | 550万円 |
〃 2人の場合 | 650万円 |
〃 3人以上の場合 | 750万円 |
被害者に被扶養者がいる場合 | 上記額に200万円を加算 |
注)請求権者 : 慰謝料を請求できる人。被害者の父母(養父母を含む。)、配偶者及び子(養子、認知した子及び胎児を含む。)のみ。
Tさんの場合、ご両親は既に他界されているので、請求権者は配偶者と子供の2名です。
さらに被扶養者有りなので「精神的損害に対する賠償額」は次のようになります。
本人分350万+請求権者2名分650万+扶養者加算200万=1,200万
人身傷害保険支給総額の算出
Tさんの逸失利益は3,664万円、「精神的損害に対する賠償額」は1,200万円でした。
この他にも葬儀費用など細かな金額として60万円が加算されます。
その結果算出された最大支給額は4,924万円となりました。
自分の損害補償は無制限には得られない
このように、いくら保証を充実させようとしても、補償額には上限が有ります。
Tさんの場合には保険を幾らかけても、4,924万円以上の補償を得られる可能性は低いのです。
これに対してTさんは昨年加入の自動車保険の人身傷害補償額を「無制限」としていました。
これでは明らかに過度な保険です。
必要な補償額を反映して頂くことで、保険料は下がるはずです。
今回の計算のように、保険契約の金額が高くても、実際に支給される額は厳密に計算され、多くの場合減額されます。
医師や会社役員など、収入が高い方の場合は異なった数字が出るでしょうが、殆どの方の支給可能最高額は5,000万円を超えません。
実際に保険会社の方にお聞きしたところ、人身傷害の支給額が3,000万円を超えるケースは多くないとのことでした。
そのため、Tさんの人身傷害は2,400万円、高くても5,000万円が適正値と考えて良いでしょう。
人身傷害の補償額
高額所得者でない限りは3,000万円以下が妥当
バイク保険も自動車保険も選び方は生命保険と同じ
今回説明したように、保険の補償額はかなりシビアに算出されます。
そのため補償を厚くした分だけ安心も厚くなるという訳ではありません。
補償額は自ずと最高額が決まっているのです。
過度な保障は無駄でしかありません。
では最高額ギリギリの設定をすれば良いかと言えば、それも誤った考えと思います。
この点は人により考え方が異なる部分ですが、私としては必要な補償額をカバーできれば、その上乗せは不要と思います。
例えばTさんの場合には人身傷害の補償額を5,000万円とすれば、万が一の際には満額に近い額が支給されるでしょう。
しかし私としては既に算出した2,400万円がカバーされれば十分と考え、毎年の保険料を安くした方が良いと思います。
Tさんはあと2年ほどでお子様が自立されるので、その後は必要な補償額も、実際に補償される額も大きく変わってくるでしょう。
バイク保険も自動車保険も年収、年齢、家族構成によって補償内容変えていく必要があります。
その点、生命保険の選択と何ら変わりません。
「子供が小さいうちは十分な補償」「子供が独立したら補償を減額」「定年後は最小限に」という風にライフステージに合わせて毎年見直すと無駄が少なくなります。
「FPならこう見直す バイク保険と自動車保険 ⑦」に続きます。