交通事故に限らず慰謝料という言葉は色々な場面で求められます。
そもそも慰謝料とは「精神的苦痛に対する損害賠償金」「身体・自由・生命・名誉などを侵害する不法行為や債務不履行について請求できる金額」のことを言いますが、苦痛や精神的苦痛に支払われる金額をどのように決めればよいのでしょうか。
物の破損とかケガであれば「修理費」「治療費」など、何らかの根拠があります。
実は慰謝料にも算定の根拠があるのです。
ただしその根拠が3種類あり、どの基準を使うかで金額が大きく変るのです。
目次
慰謝料を算出する3つの基準
慰謝料を算出する基準は以下の3種類があります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
例えば事故後1か月入院し15日通院した場合の慰謝料を、それぞれの基準で求めると以下のようになります。
- 自賠責基準 : 19万円
- 損害保険基準: 50万円
- 弁護士基準 : 77万円
何れも概算ですが価格の差が大きいことはお判りいただけると思います。
なぜこのような差が生じるのでしょう?
それはそれぞれの基準の考え方が異なるためです。
自賠責基準の考え方
自賠責基準は自賠責保険と同じように「交通事故により負傷した被害者に対して、法令で決められた最低限の補償を行う」ことを目的としています。
参考記事 : 自賠責保険とは?
弁護士基準の考え方
一方で弁護士基準は過去の裁判で認められた賠償額をもとに「加害者に請求できると思われる金額」を弁護士会が定めています。
判例をもとにしているため最低限の補償ではなく、実際に被害者が被った精神的苦痛や失った将来に対する補償など、多岐にわたる要素が含まれるために金額が上がるのです。
つまり自賠責基準が「最低限」の金額であるのに対して、弁護士基準は「失った事柄や新たに生じた障害の全てを含んだ金額」なのです。
損害保険基準の考え方
残る損害保険基準ですが、この基準は自賠責基準と弁護士基準を元に各損害保険会社が独自に定めています。
損害保険会社が示談交渉に際して提示する金額であるため、自賠責基準と弁護士基準の中間値をもとに算定される傾向にあります。
平たく言えば「このくらいで手を打ちませんか?」と提示するに用いやすい金額ということです。
まとめ
3つの基準の違いについてはお判りいただけたでしょうか。3つの基準は目的が異なります。要点を記しますと、
- 自賠責基準 → 最低限の金額
- 任意保険基準 → ある程度妥協は必要だが、納得が可能な金額
- 弁護士基準 → 被った損害を全て補償させることを目的とした金額
というようになっているのです。