バイクのすり抜けは、法律的に違反行為となるのでしょうか。
ライダーの間でも常に話題になるテーマなので、道路交通法を基に完璧に調べました。
すり抜けは事故のリスクが高まるので、行わないに越したことはありませんが、渋滞の時などはどうしてもすり抜けをしたくなるものです。
すり抜けの違法性について考えてみます。
目次
すりぬけのパターン
すり抜けとは「車の間を縫って、連続して車を追い越す、追い抜く行為」と言って良いと思います。
そのパターンは主に3つに分けられます。
- 車線変更せずに車の右側から抜く
- 車線変更して車の右側車線から抜く
- 車の左側から抜く
すり抜けとはこれらの3つのパターンを連続して行っている状態なので、違法かどうかはその1つ1つの行為が適法かどうかで判断されることになります。
例えばすり抜けで3台の車を抜いたとすると、
1台目の抜き方→〇適法
2台目の抜き方→×違法
3台目の抜き方→〇適法
というような状態が起こるのです。
これが「すり抜けは違法行為なのか?」の判断を分かり難くしているのです。
追い越しと追い抜き
すり抜けが適法か違法かを考えるときには「追い越し」と「追い抜き」を理解する必要があります。
それぞれの定義は以下のようになっています。
- 追い越し:車線を変えて前の車を抜くこと
- 追い抜き:車線を変えずに前の車を抜くこと
fa-exclamation-circle「追い越しとは車線を変えて前の車を抜いた後に、その車の前に戻る(元の車線に戻る)ことを言う」と言われる方がいますが、そうではありません。前の車を抜く為に車線を変えた時点で追い越し行為の開始とみなされます。
追い越し行為の開始をしたにも関わらず、追い越しと判断されないのは、追い越し禁止ではない場所で車線を変え、前の車に並んだ後に「相当距離」を並走した後に前に出た場合です。
「相当距離」は「およそ100m」ほどと言われています。100mは時速60kmで走っていると6秒に当たります。
例えば60km走行の時に車線を変えて前の車に並び、6秒程度並走した後に抜かせば、追い越しではなく追い抜きであると考えられます。
すり抜けで問題となる行為
先ほどの「すり抜けの3パターン」を違法適法に分けてみます。
- 車線変更せずに車の右側を通って抜く
〇適法です - 車線変更して車の右側車線から抜く
追い越しの為の車線変更禁止の場所(黄色線の場所等)であれば×違法、そうでなければ〇適法。
ただし「相当距離」を並走した後なら〇適法。 - 車の左側を通る
×違法です。ただし車が右折しようとしているなら〇適法。
fa-exclamation-circleMemo:
(追い越しの方法)第二十八条 車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。
2 車両は、他の車両を追い越そうとする場合において、前車が第二十五条第二項又は第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央又は右側端に寄って通行しているときは、前項の規定にかかわらず、その左側を通行しなければならない。
合法的なすり抜けとは
合法的なすり抜け(と言って良いかどうかは別ですが)とは、どのような方法なのでしょうか?
先ず最もすり抜けへの誘惑が強い、信号待ちのケースで考えてみます。
信号待ちでの合法的なすり抜け
大前提として交差点手前30mは追い越し、追い抜き禁止です。
加えて停止車両の左側を走るのも違法ですし、停止した車を抜かしてその前に出るのもダメです。
fa-exclamation-circleMemo:
(交差点での追い越し禁止)
第三十条 車両は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、他の車両(軽車両を除く。)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない。
【中略】
三 交差点(当該車両が第三十六条第二項に規定する優先道路を通行している場合における当該優先道路にある交差点を除く。)、踏切、横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に三十メートル以内の部分。
それでは違反せずに少しでも交差点に近づくにはどうしたら良いのでしょう。
あまり褒められた検証ではないかもしれませんが、考えてみます。
解説!信号待ちで合法的にすり抜ける方法
1.交差点から30m以上手前で、最も短い車列に目標を定める。
全ての車列が30m以上あるなら、車の右側にすり抜けられるスペースがありそうな車列を目標とする。
2.その車列に向けて車線を変える。
3.車列に追いついたら停止する。
この時に交差点までに30m以上あるなら、車の右側を抜けて進むことは可能。但し追い抜きは交差点30m手前までに終わらせる。
この時に車線が黄色でなければ車線変更は可能だが、変更しても元の車線に居る車の前には出れない(追い抜きになる)。また移動した車線に居る車の左側を抜けるのもダメ(右折車なら可)。
如何でしょう?
かなり難しい方法になってしまいました。
つまり交差点手前30mを超えたら何もできないということですね。
高速道路での合法的なすり抜け
それでは交差点がない高速道路ではどうでしょうか。
高速道路は交差点がないので30mルールは関係ありません。最も履行困難となるのは「左側から抜いてはいけない」という規則でしょう。
これを遵守しつつ渋滞を抜けていくには、車の右側と道路境界線の間を進む以外に方法が有りません。
但し同じ車線内で車の右側から抜くというのは、自動車の運転手の死角に入り易い走り方です。
お世辞にも安全な走行とは言えないと思います。
高速道路でもすり抜けは避けた方がよさそうです。
路側帯は危険地帯
すり抜けをしない為でしょうか? 高速道路の路側帯を走っていくバイクを時々見ます。
路側帯を走れば車との接触リスクはほぼ無くなるのですが、そもそも路側帯は道路ではありません。
あまり高速道路を使わない私ですら、覆面パトカーに検挙されている路側帯走行のバイクを何度も目撃しています。
渋滞を早く通過するために路側帯を走っているのでしょうが、逆に時間がかかることになりますので行わないようにしましょう。
すり抜けても捕まりにくい「グレーゾーン」がある
このように、すり抜けはほぼ規制に引っ掛かりますが、一つだけ「黒」ではなく「グレーゾーン」となっている場所が有ります。
それは、車道外側線と歩道の間を通って抜かした場合です。
この赤線の部分が、車道外側線と歩道の間に該当します。
Photo by Google street view
ここでのポイントは、
・車道の一番左に線(車道外側線)が引かれていること
・車道とは別に歩道が設けられていること
の2点です。
この2点が満たされている場所で、上記の赤い部分を走行した場合には、捕まらない可能性が高いのです(絶対ではありません)。
因みに、車道外側線が引かれていても、歩道が別に設けられていない場合には、外側線の外側は歩道ですので、バイクを乗り入れてはいけません。
このような場所です。
Photo by Google street view
例え歩道が別に設けられていても、車道外側線が引かれていなければ、車の左を通って抜かすことは出来ません。
このような場所です。
Photo by Google street view
すり抜けても捕まる可能性がとても低いケース
・車道の一番左に線(車道外側線)が引かれていること
・車道とは別に歩道が設けられていること
この2点を満たしている場所で自動車の左側をすり抜けた場合には、絶対ではないにしろ捕まる可能性はかなり低くなります。
ハッキリと「大丈夫です」と書くことが出来ず恐縮なのですが、この部分を使っての追い抜きについては、過去の裁判で合法判決も違法判決も出ているのです。
つまり「どっちとも取れる」のです。そのため、警察官も明らかに危険走行である場合を除き、捕まえ難くなっているのです。
すり抜けで違反とされた時の罰則
これまで見てきたように、すり抜けはかなりの確率で違法行為となります。
すり抜け違反という違反項目は無いのですが「追越し違反」「進路変更禁止違反」「割込み等」 などの違反となる可能性が高いのです。
これらの違反は点数で1~2点、罰金は6千円です。
それに加えて痛いのは、急ぎたい時に警官に止められ、かえって時間を要してしまうことでしょう。
仮に見つからなかったとしても、これが原因で事故となればケガを負うだけでなく過失割合も圧倒的に不利となります。
すり抜けは頻繁に見られる行為ですが、すり抜けには想像以上のリスクが潜んでいることを忘れたくないものです。
関連記事 : 過失割合の基礎知識
参考サイト : 警視庁
すり抜けは割に合わない
すり抜けを細かく見ると違反行為の塊と言って良いでしょう。
しかし実生活では危険行為とみなされない限り、取り締まられる可能性は低いことも事実です。
最後に、、、
私は殆どすり抜けをしません。
そのため、少しでも道が混むと、すり抜けるライダーにどんどん追い抜けれて行きます。
ですが、適法な進路変更や追い越しを上手に行って走ると、いつの間にかすり抜けていったバイクに追いついてしまう事が多々あります。
頻繁なすり抜けはリスクばかり大きくて、あまりメリットが無いというのが私の実感です。
また、渋滞のすり抜けでも捕まることはあります。
渋滞で並んでいる私の真横をすり抜けていったバイクが、少し先の交差点で白バイに捕まっていたことがありますので、気を付けましょう。