任意保険で最も分かり難いのが、人身傷害と搭乗者傷害の違いではないでしょうか。
保険会社のホームページで違いが説明されていますが、法律に基づいた言葉を用いているために、かなり分かり難くなっています。
ここでは2つの補償の違いを出来るだけ分かり易く説明します。
人身傷害、搭乗者傷害とも、事故にあった時に自分のバイクに乗っていた人(自分を含みます)のケガや死亡に対して保険金が支払われるのですが、払われる額の決め方と、払われるタイミングが違います。
目次
事故にあった時に得られる補償(支払われる額)の違い
先ずは支払われる額の決め方を見てみます。
搭乗者傷害から支払われる保険金の決め方
搭乗者傷害は体のどこにケガをしたかにより支払われる金額が決まります。治療に幾らかかったかは関係がありません。
例えばこのような決め方です。
- 死亡 1,000万
- 頭のケガのうち脳挫傷などの深刻なもの 100万円
- 骨折や脱臼 30万円
保険会社によって支払われる金額は異なりますが、考え方は同じです。
通院や入院についても実際にかかった金額ではなく、4日以内なら1万円、それ以上なら症状に応じて定められた金額、というように予め定められた保険金が支払われます。
更に、事故の原因によって支払額が減額されることがあります。事故の相手が悪かった部分については補償がおりないのです。
例えば、事故の原因の7割が相手、3割があなたにあると判断された場合には、たとえ保険金100万円の補償を契約していたとしても、実際に払われるのは3割の30万円のみです。残りの70万円は相手が加入する保険で賄うことになります。
もし相手が保険に入っていなければ、相手から直接払ってもらわなければなりません。
尚、搭乗者傷害を「同乗者傷害」と理解し「2人乗りはしないから搭乗者傷害は不要」と考える方がいらっしゃいますが、完全な誤解です。搭乗者傷害は自分と同乗者、両方が補償の対象になります。
人身傷害から支払われる保険金の決め方
人身傷害は実際にかかった治療費が支払われます。
また通院や入院についても、実際にかかった費用が補償の対象になります(何れも上限や支払い基準が設けられていますので100%出るとは限りません)。もちろん同乗者も保障範囲です。
搭乗車傷害と異なり、事故の責任が相手にあったとしても、補償は減額されません。
加えてケガにより休職した期間に受け取れなかった給料や、精神的に負ったダメージについても補償の対象になります。
更にバイクに乗っていない時に自分が負ったケガや、家族が自動車事故にあった場合にも補償の対象となります。
保険金が支払われるタイミングの違い
次に保険金が支払われるタイミングを見てみます。
搭乗者傷害の保険金が支払われるタイミング
治療費に関係なく金額が決まるので、早期に受け取りが可能です。
申請さえすれば、直ぐに支払いが行われます。
人身傷害の保険金が支払われるタイミング
治療費をもとに支払額が計算されるため、一旦は自分で治療費を立て替えなければなりません。
保険金は治療費の確定後に支払われます。
搭乗者傷害と人身傷害、結局どちらが良いのか?
補償内容を考慮すれば、間違いなく人身障害の方が安心です。
ただし人身傷害は保険金支払いまで時間がかかるため、その間の立替は発生します。
加えて補償が厚い分、保険料もかなり高額となります。特にバイクの場合にはその傾向が顕著です。
また、定期的な収入が無い方(定年退職者や、収入が一定しない自営業者など)の場合には、休業障害の算定額が低くなる可能性があります。
このようなデメリットはあるものの、実際に事故にあった際に発生するであろう負担を考慮すると、たとえ保険料が高くても人身傷害は外すべきではありません。
若い方の場合には人身傷害を付けると保険料が大変高額になりますが、保険料だけで契約内容を決めることなく、双方の特徴を理解したうえで検討するようにしてください。
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因みに、人身傷害と搭乗者傷害のどちらか一方を選ばなければならないわけではありません。両方の補償を付けても良いのです。
両方を付けた場合には、ケガの直後に搭乗者傷害の保険金が支払われ、治療費用等の確定後に人身傷害の保険金が支払われます。